メールマガジン(6.16)を配信しました。

「あれもこれも・・・」 

 今から5年前の2017年6月にドイツ・ハノーバーでの学会に参加した際、知人のドイツ人と日本のカリキュラム改訂について話をしたことがあります。「日本では資質・能力を軸に改訂をした」と私が説明をすると(実際にはコンピテンシー・ベースと伝えた)、その知人からは「資質・能力を軸にすると、やらなければならないことが増えすぎる」「ドイツでは、テーマを絞って研究も実践も進めており、インクルーシブに限定した研究や実践が多いよ」と言われたのを思い出します。
 その当時、私はその話をぼんやりと聞いていたのですが、新しい学習指導要領が始まってみると、知識、技能。思考力・・・と配慮していかなければならないことが多くあります。また、多くの教科で指導内容の削減が図られておらず、現代的な課題に対応するための内容がむしろ追加されています。加えて、コロナの問題が重なり、学校現場の慌ただしさに拍車がかかっています。
 残念ながらドイツ人が5年前に予想した「やらなければならないことが増えすぎる」といったことが、授業のレベルでも、日常の労務のレベルでも、ある意味で的中しています。不登校児童生徒の増加やいじめ問題への対応、教職員の精神疾患を起因とした休職者の増加、教員のなり手不足など、日本の教育界をめぐる構造的な問題が露呈しており、子どもや教職員のウェルビーイングを高める流れとは真逆の現象が起きています。
こうした一連の問題への対応の一つとして、近年では、カリキュラムの過積載問題(カリキュラム・オーバーロード)が本格的に議論され始めています。心身共に疲弊している子どもや教職員が大勢いるという事態を重く受け止め、「人にやさしく、持続できそうな改革」「完璧さを求めない、あれもこれも求めない態度」が求められています。
      日本体育大学  近藤 智靖

◆◆◆◆◆◆◆ CONTENTS◆◆◆◆◆◆◆◆
□ 巻頭言
「あれもこれも・・・」  
 日本体育大学 近藤 智靖
□ サークル提案研究団体紹介(その3)
 大海の会(新潟)松田 康伸 先生
□ 事務局より
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