メールマガジン(3.27)を配信しました。

「これからの体育の授業づくりの課題」
 -ICTの有効活用に向けて-
  
 体育授業研究会のメンバーとなってから25年になりました。1997年に筑波大学で開催されました、第1回の夏の研究大会が最初でした。当時は大学院の修士課程の1年生で、まだ体育科教育学を学び始めたばかりでした。すぐに、内田雄三先生(当時、東京学芸大学附属世田谷小学校)と日野克博先生(当時、筑波大学体育科学系文部技官)に声をかけていただき、内田先生の陣取り型授業のゲーム分析を担当させていただいたのが、私自身のボールゲームの研究の出発点となりました。
 それから、学習指導要領も3度改訂され、求められる体育授業の在り方も少しずつ変化してきました。先日、ある小学校で、1年生の「相手コートへボールを投げ入れるゲーム」を参観する機会がありました。子どもたちが嬉々としてビニール袋で作られたボールを相手側のコートに投げ入れたり、飛んでくるボールを追いかけ、キャッチしたりすることを楽しんでいました。子どもたちの学びの姿から、私が体育科教育学をスタートしたときに、恩師である髙橋健夫先生に教えていただいた、「よい体育授業」の条件を満たした授業でした。他方で、子どもたちが、1人1台ずつタブレット端末を取り出し、アプリを使って、今日のゲームで自分がうまくいった攻め方を器用に図示していました。低学年の、しかも1年生の子どもたちがICTを使用するだけでなく、ゲーム中の自らの動きを再現している姿に、これからの体育の在り方を目の当たりにした瞬間でもありました。
 コロナ禍の影響もあり、GIGAスクール構想が加速度的に普及し、いずれの教科においても、タブレット端末等を活用するのが常軌的な活動になりつつあります(授業の始めは、「それではまず始めに、タブレットの電源を入れましょう」が、先生の決まり文句になる日が来るのも近いかもしれません)。これまで学習カードに授業の振り返りを記述するのが難しいとされてきた(国語で読み書きを始めたばかりの)1年生であっても、さまざまな教科でICTを活用する経験を積み重ねることによって、先に紹介したような体育の授業が、全国各地の小学校でも見られるようになっていくのではないか、ということを強く感じているところです。
 教育の在り方は、社会の変化と相即的に変わっていかなければならない部分がある(流行)のは言うまでもありません。しかし、単なる流行の視点だけで物事を捉えてしまっては、その本質を見失ってしまうことも然りだと思います(ICTを使うことだけが目的になってしまったり、それに費やす時間が増加し、運動学習時間が抑制されてしまうなど)。
この体育授業研究会で追究し、そして共有してきた「よい体育授業」の条件や方法等を大切にしつつ、これからの体育授業の在り方を研究したり、皆さんと議論したりすることができれば幸いです。
早稲田大学 吉永武史

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□ 巻頭言
 これからの体育の授業づくりの課題
 -ICTの有効活用に向けて-
 早稲田大学 吉永武史
□『体育授業研究』第25巻について
 編集委員長  三田部 勇
□第27回体育授業研究会研究大会について
□サークル提案研究団体紹介(その4)
 新河岸の会(埼玉) 石坂 晋之介先生
□事務局より
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